適正使用情報

適正使用ガイド

【禁忌(次の患者には投与しないこと)】

本剤又はポルフィリンに対し過敏症の既往歴のある患者
ポルフィリン症の患者〔症状を増悪させるおそれがある。〕
光線過敏症を起こすことが知られている薬剤:テトラサイクリン系抗生物質、スルフォンアミド系製剤、ニューキノロン系抗菌剤、ヒペリシン(セイヨウオトギリソウ抽出物)等、セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品を投与中の患者
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人

本剤は、脳の機能的構造に関する深い知識があり、本剤についての十分な知識と悪性神経膠腫の手術に豊富な経験を持つ医師の管理のもとに使用してください。
併せて、最新の添付文書をご熟読ください。


本ガイドは、本剤を適正に使用いただくため、患者の選択、調製方法、蛍光診断法、注意事項等について解説しています。ご熟読いただき、本剤を適正にご使用いただくためのガイドとしてご活用ください。

監修:独立行政法人 国立がん研究センター中央病院
   脳脊髄腫瘍科 科長 渋井 壯一郎 先生
   (2018年2月現在)帝京大学医学部附属溝口病院 脳神経外科 客員教授

注)

本ページにおいては、本剤の含有成分であるアミノレブリン酸塩酸塩(5-ALA HCI)、生物に存在する5-アミノレブリン酸(5-ALA)及び動物実験等に使用した5-アミノレブリン酸リン酸塩(5-ALA P)を総称して「5-ALA」と記載しています。

アラベルの投与方法

本剤は水に溶解した後、経口投与します。溶解方法は、「アラベルの調製方法」(適正使用ガイドp.4)を参照してください。

  1. 手術時の麻酔導入の3時間前(範囲:2~4時間)に、成人には20mg/kgを経口投与します。
  2. 本剤投与後は、500ルクス以上の光(手術室の照明や直射日光など)に目及び皮膚が曝露しないよう注意してください。

アラベルの投与方法

腫瘍の切除

開頭後に青色光線(400~410nm)を照射することで、腫瘍組織が赤色の蛍光を発し、可視化されます。光源はキセノンを使用し、高輝度LEDなども使用されることがあります。
蛍光は、その強度により蛍光を強く発する「強蛍光」と弱い蛍光である「弱蛍光」に分けることができます。臨床試験の結果では、弱蛍光は強蛍光に比べ腫瘍組織の陽性診断率が低くなりました(臨床データ参照:適正使用ガイドp.12)。

(1)術中蛍光画像

肉眼では腫瘍の位置がわかりにくいことがありますが(A)、本剤を内服し、青色光線(400~410nm)をあてると腫瘍組織のみが赤く光ります(B)。腫瘍を摘出し(C)、再度青色光線をあてて確認すると残存している腫瘍細胞が赤く光ります(D)。
Dの状態から、改めて腫瘍切除範囲を設定してください。

術中蛍光画像

上記は臨床症例の一部を紹介したものであり、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。効能・効果、用法・用量、禁忌を含む使用上の注意については適正使用ガイドp.18を参照してください。

(2)強蛍光及び弱蛍光の判断基準

  1. 国内臨床試験1)における強蛍光/弱蛍光の判断は、術者の主観により行われました。
  2. 以下の図(写真)を判断基準の参考として用いました。

日本レーザー医学会による「脳神経外科疾患を対象としたレーザー治療の安全ガイドライン」では、「5-ALAを用いた赤色蛍光を発光する組織の診断は病理学的診断とは基本的に異なるので最終的な組織診断には慎重を要し、病理学的診断を待たなければならない」としています2)

◆国内臨床試験で用いた判断基準の参考写真3)

上記は臨床症例の一部を紹介したものであり、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。効能・効果、用法・用量、禁忌を含む使用上の注意については適正使用ガイドp.18を参照してください。

(3)偽陰性及び偽陽性への注意

  1. 本剤の使用によっても腫瘍組織が可視化されない場合があります。
    腫瘍部位に蛍光が認められないことがあります。また、正常組織でも蛍光が認められることがあります。

<重要な基本的注意>

本剤を用いた診断において偽陰性及び偽陽性を示す部位が生じる可能性があることを考慮し、他の方法による診断や残すべき神経機能も踏まえて切除範囲を決定すること。

  1. 国内試験 1)では、弱蛍光領域での生検組織ごとの陽性診断率(組織学的に腫瘍細胞が認められた率)は77.2%であり、浸潤している悪性腫瘍細胞と正常細胞が混在していると考えられます。
  2. 本剤投与後、腫瘍部位に蛍光が認められないことがあります。国内試験 1)45例中3例において、術中迅速病理診断では悪性神経膠腫と判定されたにも係らず、本剤投与後腫瘍部位に、強蛍光及び弱蛍光を含めて腫瘍本体の蛍光が認められませんでした。
  3. 国内試験 1)では、非蛍光領域には腫瘍が認められないことを確認する目的で、患者に対するリスクが排除される場合のみ採取された蛍光近接領域(非蛍光)及び腫瘍からの遠隔領域(非蛍光)での生検組織ごとの腫瘍細胞ありと判定された割合(陽性率)(患者数38例)を検討した結果、それぞれ44/72検体(61.1%)及び29/61検体(47.5%)でした。この結果から、非蛍光である近接領域及び遠隔領域においても、腫瘍細胞が浸潤していることが示されました。

◆非蛍光領域(蛍光領域から近接、腫瘍から遠隔)における陽性診断率

(4)腫瘍切除時の注意点

  1. 本剤を用いた診断では神経機能に関する情報は得られません。
  2. 他の方法による診断や残すべき神経機能も踏まえて切除範囲を決定してください。
  1. 本剤によって誘発された脳組織の蛍光発光からは、その組織が有する神経機能に関する情報は得られません。したがって、蛍光を発する組織の切除にあたっては、その領域の神経機能を考慮しながら慎重に判断してください。
  2. 腫瘍が重要な神経機能の近隣に位置する場合、術前又は術中に、いずれかの測定により腫瘍と機能部位の位置関係の確認を行ってください。

経過観察

  1. 本剤投与後48時間は、強い光(手術室の照明、直射日光又は明るい屋内光等)への眼及び皮膚の曝露を避け、照度500ルクス以下の室内で患者を過ごさせてください。
  2. 肝機能障害があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察してください。
  3. 光線過敏症を起こす薬剤や食品の投与は、本剤投与後2週間は避けてください。
  4. 国内試験において、安全性を評価した45例中、副作用(臨床検査値異常を含む)発現例数は11例(24.4%)で、悪心3例(6.7%)、嘔吐2例(4.4%)、発熱2例(4.4%)、肝機能異常2例(4.4%)、LDH増加1例(2.2%)、γ-GTP増加1例(2.2%)、リンパ球数減少1例(2.2%)、血小板数減少1例(2.2%)、血尿1例(2.2%)でした。(承認時)
    なお、重大な副作用として「肝機能障害」があります。

(1)光への注意

本剤投与後48時間は、照度500ルクス以下の室内で患者を過ごさせてください。日本工業規格における病院内の照度基準では、手術室、診察室、処置室等は500ルクス以上です。
海外の健康成人男性(21症例)を対象とした皮膚感作試験では、投与後12、24及び48時間において、背部及び臀部に、8段階の線量の紫外線を照射し、最小紅斑量(皮膚に紅斑を生じる最小の照射熱量)を検討しました。本剤投与後の最小紅斑量は、本剤投与後12時間及び24時間において、投与前に比較し有意に低下していることが認められましたが(p<0.0001分散分析)、48時間では投与前の値に回復していました。
動物細胞(CHL細胞)に代謝活性化系非存在下において24、48時間連続で5-ALAを曝露後、光照射すると遺伝毒性(染色体の構造異常を有する細胞の出現頻度の増加傾向)が報告されています。
マウスヘの静脈内投与後に紫外線照射すると光毒性(死亡、炎症性皮膚反応)を生じることが報告されています。

◆病院内の照度基準

(2)肝機能障害

本剤により肝機能障害があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を行うなど、患者の状態を十分観察してください。

国内試験 1)で報告された肝機能障害に関連する副作用

  1. 肝機能異常2例(4.4%)

   異常と判定された検査項目の内訳
    1例:γ-GTP増加、AST増加、ALT増加、AL-P増加
    1例:γ-GTP増加、AST増加、ALT増加

  1. γ-GTP増加1例(2.2%)

動物試験(ラット、イヌ)で代謝物(PPⅨ)による肝臓障害が報告されています。

アラベルの有効性及び安全性

国内外の臨床試験時における腫瘍摘出手順

開頭後、腫瘍の一部が露出した段階で青色光線を照射し腫瘍が蛍光を発していることを確認した後に、白色光下で腫瘍本体の切除を行いました。ほぼ腫瘍切除が終了した段階で再度青色光線を照射し、本剤の診断能の評価のための組織を採取しました。

(1)蛍光組織の陽性診断率(患者の割合)

国内試験1)では、一人の患者から強蛍光及び弱蛍光を示した組織をそれぞれ最大3箇所採取し、採取した最大6検体全てが腫瘍陽性を示した患者を陽性と判定しました。蛍光組織の陽性診断率は65.8%(25/38例)でした。また、強蛍光/弱蛍光別の陽性診断率はそれぞれ94.4%(34/36例)及び65.8%(25/38例)であり、強蛍光の陽性診断率は弱蛍光より高い結果でした。

◆強蛍光/弱蛍光別の陽性診断率(患者の割合)

(2)蛍光組織の生検組織ごとの陽性診断率

国内試験1)における蛍光組織での生検組織ごとの陽性診断率は85.6%(190/222検体)でした。強蛍光/弱蛍光別の陽性診断率は、94.4%(102/108検体)及び77.2%(88/114検体)でした。

◆強蛍光/弱蛍光別の生検組織ごとの陽性診断率

(3)残存腫瘍のない患者の割合

  • 国内試験1)

術後72時間以内にMRI検査を実施し、腫瘍の摘出率を患者ごとに判定したところ、腫瘍摘出率が100%の患者は39.5%(15/38例)でした。腫瘍摘出率が95%以上の患者は71.1%であり、50%未満の患者は認められませんでした。

◆腫瘍摘出率別の患者割合

  • 海外第Ⅱ相試験4,5)

事前の画像診断などによる摘出可能な度合いに関する規定は設けずに、初発、再発の患者それぞれに対して試験が実施されました。腫瘍摘出率が100%と判定された患者は、初発の患者で42.4%、再発の患者では19.4%でした。日本と海外の成績は同程度でした。

  • 海外第Ⅲ相試験6)

本剤投与群と、対照群[白色光下で行う切除術であり、薬剤非投与]の2群に分け、初発の悪性神経膠腫(WHOグレードⅢ/Ⅳ)と推定された患者415例[5-ALA群:207例、対照群:208例]に対し、残存腫瘍のない患者の割合(術後72時間以内のMRI検査による)を検討したところ、5-ALA群で63.6%、対照群で37.6%であり、両群間に有意差が認められました(p<0.0001 χ2検定)。

◆術後早期MRI検査による残存腫瘍のない患者割合

(4)無増悪生存期間6)

前記海外第Ⅲ相試験において、術後6ヵ月での無増悪生存率は、5-ALA群で20.5%、対照群で11.0%と有意差が認められました(p=0.0152 χ2検定)。また、無増悪生存期間のKaplan-Meier解析を実施したところ、統計学的に有意差が認められました(p=0.0215 log-rank検定)。6ヵ月後のKaplan-Meier法による無増悪生存率は、5-ALA群で35.2%、対照群で21.8%と有意差が認められました(p=0.004 Z test)。

◆Kaplan-Meier法による無増悪生存期間

(5)初発/再発別の陽性診断率1)

初発及び再発別の陽性診断率は、初発患者63.6%(14/22例)、再発患者68.8%(11/16例)でした。初発/再発患者における強蛍光/弱蛍光別の陽性診断率は、初発患者100.0%(22/22例)及び63.6%(14/22例)、再発患者85.7%(12/14例)及び68.8%(11/16例)でした。強蛍光/弱蛍光別の陽性診断率において、再発患者における強蛍光の陽性診断率は、初発患者に比しやや低い傾向でした。生検組織ごとの陽性診断率においても同様の結果でした。

◆初発/再発別の陽性診断率(患者の割合)

◆初発/再発別の生検組織ごとの陽性診断率

(6)副作用発現頻度一覧 国内試験1)

◆初発/再発別の生検組織ごとの陽性診断率

※肝機能異常例で、異常変動と判定された臨床検査項目の内訳
  1例:γ-GTP増加、AST増加、ALT増加、AL-P増加  1例:γ-GTP増加、AST増加、ALT増加

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